『生理ちゃん』(著・小山健/エンターブレイン)

男性にとって永遠に理解できないものの1つが、「女性の身体」だ。別に下品な意味ではない。人体の機能は男女で異なり、女性が感じている身体的な悩みを男性が本当の意味で理解することは不可能である。そのなかでも、もっとも神秘的な出来事こそ「生理」だろう。およそ1月に一度訪れる女性の身体的な「変化」について、多くの男性が恐ろしいほどに無知である。

小山健が描くマンガ『生理ちゃん』は、生理をキャラクター化するという挑戦的な作品だ。時期が訪れると女性のもとにやってきて、下腹部にパンチを放ちつつ、血液を抜いていく生理ちゃん。こうなると女性はとにかく動くのも大変で、普段と同じように活動することが不可能になってしまう。生理ちゃんは男性にも見えていて、「ああ生理が来たんだ」とわかるものの、女性側の大変さを理解しないまま無神経な言葉を放ったりする。すると、生理ちゃんは怒り出し、失礼極まりない男性に全力の拳をお見舞いするのである。

生理ちゃんの訪問に、女性の都合は関係ない。仕事が大変なときにもやってくるし、失恋で悲しいときもお構いなし。大事な場面でやってきても、遠慮せずにガンガン殴ってくる。女性にとっても迷惑な訪問者のはずの生理ちゃんだが、それは長い時間をともに過ごす相手でもある。生理ちゃんは、女性なら誰でも向き合わないといけない存在であり、まるで親しい友人のように寄り添ってくる。どれだけ迷惑がられても、生理ちゃんは決して消えることはないのだ。

生理ちゃんは女性一人ひとりのもとにいる。大きな生理ちゃんもいれば、小さな生理ちゃんもいる。小さい生理ちゃんしかしらない女性は、大きな生理ちゃんと付き合う女性のつらさがわからない。女性もまた、「自分の生理ちゃん」のことしか知らないし、理解できないということなのだろう。そのせいで、お互いの態度が「気に入らない」と感じて、ケンカをしてしまうこともある。

本書は「生理ちゃん」というタイトルではあるものの、女性向けの本というわけではない。男性が読んでもおもしろいし、感心させられることも多い。女性の身体と、それにまつわる心の動き。「男性から見た女性」や「女性から見た男性」の姿をコミカルに描いている。男性にとって「生理ちゃん」は、一生理解できない存在だろう。しかしそれはきっと女性も同じなのだ。

また、男性には生理ちゃんの代わりに「性欲くん」というキャラクターが付いてくる。生理ちゃんのように定期的に訪ねてくるものではなく、急にやってきては男性の邪魔をするのだ。女性からすれば、「下品だ」と思うかもしれないが、本人も意識しないときに勝手に現れることも多い。生理ちゃんのようにパンチを放つことはないから、その点は男性のほうが恵まれていると言えるだろう

「どうしてこんなに苦しまないといけないのか」「なんで自分ばっかりつらい目に合うのか」と、女性が思うのは当然だろう。現実の男性には、生理ちゃんのパンチを受ける機会などない。だからこそ、男性はそのことから目を背けるべきではないのだ。生理ちゃんは何かを学べる本と言うよりも、女性にとっては共感を、男性にとっては気づきを与えるものだろう。生理ちゃんが隣にいると、女性はいつも通りには振る舞えない。

それはずっと昔から同じだったはずなのに、いまだにきちんと受け入れられていない部分が多い。けれども、男性がどれだけ無視をしようとも女性がどれだけ気張ろうとも、生理ちゃんは当たり前の顔をしてドアを叩いてくる。生理ちゃんとの付き合い方は、誰もが考えるべきだ。なぜなら女性にとっては自分のことであり、男性にとっては大切な人のことだからである。本書は本当は当たり前であるはずのものを改めて教えてくれるマンガなのだ。


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