初めに言っておくが、私は君たちにただ単に感動的な映画を紹介したいわけではない。
というよりも、素晴らしい映画が多すぎて、私には簡単にしぼることができないのだ…。
そう。私は無類の映画好きだ。
放っておいたら愛をこじらせて150選くらいになってしまうだろう。
それを全て見るくらいなら、1ページでも漫画を描き給え。
そんな経緯で、「漫画家におすすめ」というポイントをしっかり考察したうえで、
涙をのんで15選にしぼることにした。
私の君たちへの深い愛情を受け取ってほしい。
目次
漫画家に必要な能力とは?
まず初めに、漫画家が鍛えるべき力を明示して、それをもとに話をすすめていきたいと思う。
では早速。
大きく分けて3つのポイントに分けてみた。
1つ目は漫画という表現方法への理解を深めることだ。
君は知っているか。
どんなに素晴らしい漫画でも、映画や実写になると悲しい結末を迎える場合があることを。
「ケンシロウが…シンが…」とか「なんだこのデビルマンは」とかいう原作ファンたちの悲痛な叫びを。
切り取り方、表現の仕方でこうも違うのかと学びながら、大人になっていくのだ。
2つ目に挙げておきたいのは圧倒的大喜利力である。
大喜利力とは、瞬発的ユーモアセンスと言い換えることもできよう。
奇跡の長寿番組、笑点のアレである。
何が来ても笑いにつなげられる、何が来ても話を広げられるという力こそ
漫画家に求められる能力ではないだろうか。
漫画ならじっくり笑いを練れるし、瞬発力は関係ないんじゃね?というそこの君。
そんなことはない!!
笑いには鮮度が大事なのだ。
面白い瞬間を新鮮なままで閉じ込めることで、はじめて読み手に笑いが伝わるのである。
それに、編集からいつ「鼻毛でプロット書いてみて」と言われないとも限らない。
今のうちに鼻毛で超大作を作れるようにしておこう。
3つ目は何だろうか。
デッサン力?想像力?コミュニケーション能力?目標達成能力?
違うっ!!
それら全てを根底から支える絶対的に必要な能力があるのだ。
それは
長時間の作業に耐えうる強靭な肩と腰だ。
私のクリエイター仲間や諸先輩方は、実に7割以上がこの部分に悩みを抱えている。
「いいところで腰痛が…」「ひらめきと肩こりが同時に来て、ひらめきが負けたせいでどこかに消えていった」という声は日常でよく聞く話。
中には、長時間同じスタイルで作業できないからといって、立ちながら仕事をする剛の者もいる。
ということで
- 漫画というメディア媒体への理解
- 圧倒的大喜利力
- 強靭な肩と腰
という3点にしぼって映画を紹介しよう。
漫画という表現の特徴を知ろう
やってはいけないことを学ぶ
まずは1つ目の視点から5つ。
- デビルマン 2004年10月9日公開
あの有名漫画「デビルマン」の期待の実写映画である。
つまらなすぎる映画としてとても有名な作品だ。
「ポスターだけはいい映画」
「事故」
という声が各所から挙がっている。
やってはいけないことを学ぶのにとてもいい教科書だと思う。
恐らく最初の10分くらいでげんなりしてしまうだろうが。
- 北斗の拳 1995年4月22日公開
こちらも名作漫画「北斗の拳」のハリウッド版実写映画。
原作との違いがすごすぎる。
南斗聖拳に関しては拳ではなく「銃」が使われている。
いや。銃はダメだ。いくらなんでも。
- 頭文字D 2005年9月17日公開
こちらも名作漫画の実写版。
日本が舞台の、日本の漫画なのに、なんとほとんどのキャストが日本人ではない。
中国もしくは香港の役者が、日本人のふりをして演じているというシュールな状況が生まれているのだ。
もちろん日本の客は、全て吹き替えで見ることになる。
それでも、上記の2つよりはマシだが。
- 進撃の巨人 (前編)2015年8月1日公開(後編)2015年9月19日公開
こちらも原作ファンを落胆させた実写版映画。
テクノロジーが進歩しても、実写がうまくいくとは限らないことを教えてくれる作品だ。
メインである巨人がとにかくひどい。大きなおじさんか百歩譲って大きなおばさんである。
立体機動シーンの遠近感が悲しいほどにデキが悪いのに加え、不要なラブシーンが余計に虚しさを掻きたてる。
原作とアニメは面白いのに、なぜこうなってしまうのか。その理由は見ているとなんとなくつかめてくるだろう。
漫画、アニメ、映画と、3つの媒体を比べることができるので、勉強になる作品である。
「漫画とは何か」を深く理解する一助になってくれれば幸いである。
失敗例ばかりでは悲しくなってしまうので
実写映画成功例といえる作品もここで1つ挙げておこう。
これも君たちへの愛であることを忘れないでくれ。
- るろうに剣心 2012年8月25日公開
上の作品と比べると、いかに漫画においてキャラクターが大事であるかがハッキリとわかる。
キャラクターが本来持っている良さを極力活かす演出になっており、それを引き立てるためのアクションや背景に仕上がっているのだ。
漫画には魅力のあるキャラクターが必要不可欠なのである。
個性的なテーマで話を作ろう
さて、ここからは2点目、君たちの大喜利力を鍛えるために、マニアックなテーマを題材にした映画を紹介していきたい。
どれもが「えっ!このテーマでこんなに広がるの?」という驚きのある作品たちだ。
- UDON 2006年8月26日公開
タイトル通り「うどん」がテーマの作品。
監督のうどんへの愛情が随所に散りばめられている。
うどんを食べたくなること間違いなし。
小銭を用意して、不測の欲求に備えておこう。
- 闘茶 ~Tea Fight~ 2008年7月12日公開
タイトルにある「闘茶」とは、その名の通りお茶を評価し合う競技のことだ。
たかがお茶。されどお茶。
この勝負次第で、一族の繁栄や名声が大きく左右されるほど、重要な行事なのである。
当然そこには、人間を描いた深いドラマが込められている。
- ローラーボール 1975年7月26日公開
その名の通り「転がる球」がテーマの作品だ。
男たちがひたすらに鉄球(鋼鉄製)を追いかける熱い物語である。
面白いかどうかは人それぞれだが、2002年にリメイクをされるほどのインパクトはある。
君たちの手で、この映画の褒めるべきポイントを探してくれ給え。
- アタック・オブ・ザ・キラートマト 1978年10月公開(日本では未公開)
こちらもタイトル通り「トマト」がテーマの作品だ。
ただし、普通のトマトではない。
世にも恐ろしい殺人トマトが人類に襲い掛かるという、恐怖のホラー映画なのだ。
想像しただけで、身の毛もよだつ思いがしてくるだろう。
- サンダーパンツ 2003年10月11日公開
さあ、いよいよ来た。
なんと「オナラ」がテーマになっている作品がある。
それが、このサンダーパンツというイギリス映画だ。
主人公はさえないいじめられっ子の少年。
彼には何も取り柄がないが、オナラが止まらないという絶対的な強みを持っている。
そこに目をつけた天才発明家の同級生が、サンダーパンツなる特殊な服を用意し、宇宙へ旅立つという壮大なストーリーだ。
さて、ここまで個性的な映画を5つ紹介してきた。
君たちにも、「自分だったらこのテーマでどんな話を作るか」を考えながら見てほしい。
なにっ?
B級だと?
それは、この記事では禁句だ。
よく肝に銘じておいてくれ。
全てを支えるのは健康的な身体
?
さて、最後は未来ある君たちの肩と腰を鍛える魔法のような映画の紹介だ。
副産物として、引き締まった肉体への羨望の眼差しと、体育会系の根性が手に入るだろう。
- マッハ!!!!!!!! 2004年7月24日公開
まず覚えておいてほしいことがある。
「!」は8つだ!!!!!!!!
足技の格闘技、ムエタイがテーマの作品である。
鍛え抜かれた俳優のアクションシーンは、なんとCGなし。スタントなし。ワイヤーなし。
俳優本人による完璧な身のこなしは、見ていて惚れ惚れすることであろう。
君たちも、自然と鍛えたくなってしまうに違いない。
- 永遠のヨギー 2016年4月30日公開
さて、前述したガチムチの筋肉もいいが、やはり実践に関わってくるのはしなやかで耐久力のある筋肉だ。
そこで、君たちに紹介したいのが、ヨガをテーマにしたこちらの映画である。
伝説のヨガ伝道師、パラマハンサ・ヨガナンダの生涯を追ったドキュメンタリーだ。
その深さを知ることで、君たちの心にヨガへの熱い向上心が湧き起こってくるだろう。
ヨガはいいぞ。ヨガは。
- サタデー・ナイト・フィーバー 1978年7月15日公開
ジョン・トラボルタ主演のこの作品は、当時のアメリカの若者を熱狂させた。
注目すべきところはその内容ではなく、彼が躍っている独特なダンスだ。
私も仲間たちと、このダンスに挑戦したことがあるが、これがなんとも腰にくる。
完璧に踊れるようになるころには、君たちの背面は、文句のつけどころのない漫画家仕様にモデルチェンジされていることだろう。
- マトリックス 1999年9月11日公開
さて、背面への負荷という意味では、この映画は外すことはできない。
言うまでもなく、「あのシーン」のことである。
上の3つを見た君たちなら、きっと「あのシーン」を再現してくれると私は信じている。
- ジョルダーニ家の人々 2012年7月21日公開
さまざまな出会いと別れを繰り返しながら、絆を深めていく家族の温かさを描いた作品だが、そんなことはどうでもいい。
君たちに伝えたいのは、上映時間の長さだ。
なんと合計399分。
一度も休憩を挟まずにこの映画を見終えたとき、君たちには心地よい達成感が生まれ、最強の肉体を手にしていることだろう。
横になりながら見るのは反則だぞ。
さて、以上が3つのポイントから見た珠玉の映画15選だ。
この中で君たちがまだ知らない映画があったのなら、漫画家として成長するいいチャンスとして捉えてほしい。
真の漫画家たちは、みな確かな引き出しの多さを持っているのだ。
新しい作品との出会いを心から楽しめる君たちであってほしいと、私は願うばかりである。
くれぐれも私のことを、腰痛もちでB級映画好きの友だちがいないおっさんだと誤解しないでくれ。
君たちへの溢れんばかりの愛が、私を突き動かしているにすぎないのだ。
筆者:男梅男