『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』(著・小林昌平/文響社)

人生に悩みはつきものである。仕事や恋愛、人間関係に至るまで、悩みが生じないものを探すほうが難しい。誰もが何らかの苦悩を抱えながら生活しており、答えを出せないまま悶々と過ごしているのではないだろうか。しかし、それは何も現代を生きる人間だけではない。そして、さまざまな哲学者が人生における問いと向き合ってきたのだ。

本書『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』では、現代人が抱える悩みに対して、歴史上の有名な哲学者や宗教家が出した「答え」について解説する。今を生きる人々にとっての悩みは、現代特有のものではない。だからこそ、人類が連綿と続けてきた「哲学」をのぞき込むことで、いかにして克服するべきかを知ることができるのだ。

たとえば、「自分を他人と比べて落ち込んでしまう」という悩み。これにはミハイ・チクセントミハイという心理学者の考えが役立つという。ミハイは「他人より劣っている」という劣等コンプレックスと「他人よりも優れている」という優等コンプレックスは、本質的に同じ「劣等感」だと指摘する。そのうえで、劣等感の原因は立場や肩書などの「人間の状態」に固執する価値観にあるというのだ。

しかし、人間の幸福はそうした「状態」によって決まることはない。本当に重要なのは「力の限りを尽くす行動」だ。本気で取り組んでなお、成功するかどうか定かではないものに、一心不乱に取り組むこと。それが真の高揚感と充実感を与えてくれるという。もし他人と自分の「状態(ステータス)」を比較して一喜一憂しているなら、それは単なる怠惰でしかない。他人のことを、そして自分のことさえ忘れてしまうほど1つのことに打ち込む機会を求めれば、劣等感に苦しくことはなくなるというのだ。

「恋人や妻(夫)とのケンカが絶えない」という悩みには、ゲオルグ・W・F・ヘーゲルという哲学者の研究が参考になる。ヘーゲルは「弁証法」と言われる手法を編み出した人物であり、これが恋愛関係や夫婦関係を考えるうえで、重要な意味を持つというのだ。ヘーゲルの考えに従うなら、夫婦だけに限らず、人間同士で争いやいさかいが起こるのは必然である。なぜなら他人とのコミュニケーションには、そうした反発が必要だからだ。

人は「自分とは違う他人」を通して、初めて自分自身を知ることができる。「他人と違う自分」を知らなければ、自分を理解できない。それはあらゆる関わりに言えることであり、むしろ「相手と違う」という感覚はとても自然なのだ。しかし、違いがある相手と共存するのは難しい。相手に譲れば自分の意見は通らず、相手を無視すれば共存は不可能だ。だからこそ、いかにして「お互いの価値観を近づけるか」を真剣に考えるようになる。

夫婦や恋人がケンカをするのは、「相手との違いを知る」ために欠かせない。「こんなに違いがあるのか」「こういう部分で意見が食い違うんだ」という過程であり、そこから本当の意味での「関わり」が始まっていく。ケンカすること自体を嘆く必要はない。大事なのは、そこから粘り強く2人が話し合い、お互いに共有できる生き方を探すことなのだ。

ハッキリ言ってしまうと、本書は本当の意味で悩みを解決してくれるようなものではない。人の悩みはそれぞれであり、どのような哲学的な解答も特定の問題を解消したりはしないのだ。しかし現代を生きる人が抱く悩みは、これまでも多くの人がぶつかってきたものである場合がほとんどである。そして哲学者や宗教家、心理学者はそうした問題を深く考えてきた。哲学に触れることは、過去の偉人たちが人の悩みに対して、「どのように向き合ってきたか」を知るきっかけになるだろう。それは現在悩んでいる人々にとっての「道標」となるはずだ。

自分だけではどうしても答えが出ない悩みを抱えているなら、ぜひ本書を一読してみることをオススメする。そしてもし、自分に必要だと思える哲学を見つけたなら、それについてさらに学んでみるとよいだろう。哲学は「幸せ」を考える学問なのだから。


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